SECTOR 9 | TRUE PROFESSIONALS
2002年10月25日
Jambase.comより

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Photo by liz o'keeffe

僕は再びあの光を見た。あの愛を感じ、ユニバーサルな知識のコップから音楽を飲み干した。そうだ、僕は再びあのサウンド・トライブの一員だった。そしてそれは僕が望んでいた以上のものだった。10月18日と19日のウイークエンドにフィルモアで行われたセクター9のショーをひと言で表現するなら、「プロフェッショナル」がふさわしい。彼等を観に行くたびにレベルが一段と上がっている気がする。音楽の世界では「今までのベストショー」とか「観る度に良くなっている」といった言葉を度々耳にするし、飽きるほど使われているわけだが、このケースに関してはそれが本当であると言わざるを得ない。もちろん僕が偏った見方をしている、あの音楽が個人的に好きなだけじゃないか、バンドの連中と知り合いだからだろう、と言って背を向けてしまう前に、意識的であってもそうでなくても生活の全ては偏った見方に左右されているわけだし、僕達の発言や感情、行動などは全て個人的な感覚のある部分を占めているものなのだ。そして、僕の友達よ、僕は音楽を決して軽く扱わないし、無意味な言葉を振り回す事もしない。その上で再度言おう。このバンドは本当に観る度に成長している。

Photo by liz o'keeffe

STS9は「ヒット曲を演奏してくれる」とか単に観衆が聴きたいものをやってくれるとかいった理由で毎日のように向上しているわけではない。彼等は常に枠を広げ、音楽に、スピリチュアルに、人間的に努力を欠かさず、彼等が真の発展を遂げているためにバンドとして進化し、成功を収めているわけだ。この2回の伝説とも言うべきショーの前に、Zachがこう言った。「僕達はみんな成長過程にあって、それぞれの居場所を見出しつつあるんだ。僕らは音楽を進化させていると同時に僕らが本当にやりたい音楽をプレイしている」と。成長に邁進し、さらに大きなものを目指す事でセクター9はいつもベストなショーをクリエイトし続けている。

Photo by Rie Kasahara

彼等のアートへの献身を続ける事について、Zachは「ハイシエラ以降、僕らは12曲もの新曲を作ったんだ」と言う。それは3ヶ月の間に12の新たな音楽的活動を意味する(そして、これはラジオから流れている4分間の小曲などではない)。しかもバンドはスタジオの穴の中に閉じこもっていたわけでもない。この週末、彼等は7曲もの驚くべき新曲を披露してくれた。この事だけでも、何事も中途半端でなく、各瞬間が、それぞれの曲が、ショーのひとつひとつが、そして変貌のひとつひとつが極限的に重要なのだという状況の要点を示しているではないか。音楽的部族としての彼等は、その勇敢な行為をもって僕にショックを与え続けている。

金曜日の夜のオープナーから始めよう。「T.W.E.L.V.E.」だ。この曲は長い間僕のフェイバリットだし、トライブの意図を明らかにするものであると同時に、その進化と変貌を続けて止まない曲だ。このバージョンは深く、ダークで、しかもつっこんだところがあってバイブレーションに満ちていた。このウイークエンドを始めるにふさわしい曲だと言っていいだろう。オープナーに続いて、バンドはダークでダーティーなエネルギー(もちろんいい意味での)を保ちながら「Mischief Of A Sleepwalker」へと突入していく。この名はその曲のイメージを正確に示している。広がるというよりは次第に狭まっていくような、より暗くなり、寒気がするような廊下をそろそろと歩き何か危険なものに近づいていくような、そんな夜行性に満ちた自分を想像したくなる。この週末の2曲目にしては野心に溢れる選択だ。出来も素晴らしかった。

Photo by liz o'keeffe

このウイークエンドのハイライトを選び出そうとすると、それ全体が一つの楽章であり巨大なハイライトであったため、非常に困難な作業を強いられる。「Mischief」を語って、それに続く「Evasive Maneuvers」の驚きを語らないではいられない。オープナーで築かれたセッティングを語ることなく、僕が愛して止まないアンコールの「Baraka」を表現できるだろうか。こういう言い方ではどうだろうか。つまり、セクター9は一曲では語れない。セクター9は統計やある一曲が何度演奏されたかといった目安では測れない。セクター9は解析したりその時間構造についてとやかく議論したりされるべきものではない。セクターは部族であり、フローである。セクター9は音楽の中に身を投じ、自分の頭脳に入り込み、共にいる素晴らしい人々の中に身を置く事なのだ。

バンドやそのトライブのファミリー、そしてその体験に大いに貢献するファン達というこれらの素晴らしい人達のように、セクター9に光を見出しているインスピレーショナルなこの人の言葉を僕達は注意して受け止めるべきだ。以下の文章は有能な写真家であり、それ以上に暖かく素晴らしい人、Rie Kasaharaが送ってきてくれたものだ:

「近頃多くのジャムバンドが日本を訪れていて、この音楽に魅了されたファン達もバンドを追ってアメリカに来る事が多くなりました。皆さんがショーで日本から来たフリーク達を見かける事もあるでしょう。私はそんなフリーク達の一人です。私はいつかこの音楽をフェスティバルでもニューイヤーズでもなく日常行われるようなショーで胸一杯に受け止めたいと思っていました。そんな機会にパーフェクトなのがSTS9でした。

Photo by Rie Kasahara

私はアメリカで二つのショーに行きました(先日のフィルモアでのショーです)。最初の夜はカメラを持たずに行く事に決めました。フィルモアの周りには大勢のファンがいて、友達同士で話し合っていました。みんな喜びと期待に溢れていました。日本のシーンも同じなのですよ。

その夜、私はただSTS9の音を追いかけていました。素晴らしかった!あれが私の感じたかったもの。ただ私の直感に素直でいたかったんです。踊るのも楽しかった。

Photo by Rie Kasahara

2日目の夜はいつものようにカメラを持ってフィルモアへ。最初の夜に感じたものをカメラに納めたかったのです。ショーというものがアーティスト、スタッフ、ファン、そしてヴェニューによって一つのものになるのだという事が分かりました。それぞれがショーの大切な要素なんだと。あんなに素晴らしいショーは今まで観た事がなかった。カメラを通してそれを経験できて私は恵まれていると感じました。」

彼女の言葉のシンプルさは僕の長ったらしいトライよりもこの体験をずっと上手く表現している。Rieの、素直で感動的な受け止め方はセクター9の全てを物語ってはいないだろうか。そして、このバンドが将来いかに大きな代物になろうとも僕達はそれを決して忘れてはならない。

しかし、その時フィルモアの中にいなかった不幸な人々のために、僕は注目すべきこの週末の出来事についてあと数件述べる事にしよう。

Photo by liz o'keeffe

ファーストセットクローザーの「Satori」とセカンドセット半ばの「Orbital」(凄いバージョンだった)に現れたAudio Angelはいつものように素晴らしい追加要素だった。彼女の大らかでゴージャスな声は人々の心を開け広げ深呼吸させるような雰囲気にしてくれた。僕をぶっ飛ばしてくれた新曲の一つ、「Muir Soul」を語らぬ事は犯罪にも等しいだろう。この曲は今も多くの人々に多大なインスピレーションを与え続けているJohn Muirへの追悼だろうと僕は考えている。この曲はジャジーでブーガルーにも近いスタイルのリードキーボードでフィップスが踊りまくるもので、トライブがさらに別の方向へと旅立つ可能性を示唆している。

金曜日のショーを評価するとすれば、それは磨き上げられたサウンドに満ちていて、このバンドのする事が万事そうであるように高いレベルでのプロの姿勢が伺えた。ショー自体は少々短く感じたが、内容はタイトかつ簡潔で、意図に溢れたものだった。

Photo by Rie Kasahara

金曜日がより磨かれた、なめらかな一夜であったとすれば、土曜日はフリークアウトだったと言える。彼等はこの夜もダークなナンバー、「Ramon & Emiglio」でショーの幕を開き、その後は深く、さらに深く入り込んでいった。前述のように、トライブは新曲をいくつか披露したが、その中の一曲が「Once Told」だ。このトラックはオープナーの「Ramon & Emiglio」に続いて演奏された。トリッピーで癒されるようなボーカルのサンプルが使われている。どうやら、その音はSTS9の親友が働く幼稚園で拾ってきたらしい。この曲は極限まで引き延ばされ、曲のフレームそれ自体と折り重なってその中からこの人声のサンプルが現れ出でるようでもあった。ここでも複雑で驚くべきサンプルの使用がSector 9を次のレベルへと押し上げており、現在手に届くテクノロジーを駆使してこれほどの効果をライブでもたらす事が出来るバンドはいないとも思われる。

Photo by Rie Kasahara

セット1のクローザー、「Jebez」は今まで聴いたものの中でも明らかにベストバージョンだった。ミドルセクションは完全に改造され、あまりにも分厚く、どろっとしたものが感じられたため、僕の背骨がしびれるように感じた。バンドメンバーはそれぞれ自由自在に新兵器を使いこなしていた。ベースプレーヤであるDave Murphyのそれは特に印象的で、一晩中当たり前のような表情でローエンドのファンク、そしてダークでミステリアスなノイズの中にドップリと身を沈めていた。Murphyは「Jebez」で新しいシンセ・ベース(正確な呼び名は全く不明である)を使って非常にディープで、ファジーに分厚く、共鳴するサウンドをベニュー内部に震動させながらオーディエンスを打ちのめしていた。Murphyがそうする間、「Jebez」は光速で疾走するZachに新たな友を見出したかのようでもあり、セット1のクローザーは次にやってくるベストセットへのイマジネーションを掻き立てた。

Photo by liz o'keeffe

土曜の夜のセット2。これが全てだと言っていい。これがこのウイークエンド全ての頂点だった。バンドがぶっ飛ばすのは正にこの時を置いて他にない。その時は誰もが夢中で気付かなかったに違いないが、このウイークエンドの最初の3セットをある程度制御しておく事で、Sector 9はコントラストをクリエイトしたのではなかったか。彼等が真のプロだと僕が言うのは正にこの事なのだ。バンドは、観衆全てを宇宙の果てへと連れ去る前にまず地球上で踊らせる事から始めなければならないと認知していたに違いない。彼等は、他のベストなバンド達がそうであるように、一つのウイークエンドの全体的な力学を理解していて、潜在意識的なマインドのニュアンスをも包含し、次なるレベルへと進化しているのだ。ここで僕の言わんとするのはクラウドが常時満たされていると感じるようにさせる並はずれた能力だ。この重大な側面を本当の意味で認識しているバンドはわずかしか存在しない。金曜日、絶頂に至るほんの少し前でためておいて、土曜日のファーストセットでさらにもう半歩進むことで、トライブはこの食らうマックスの準備を着々と行っていたのだ。そして、その夜のセット2の時点では、彼等が宇宙服を装着し、タラップを駆け上がるだけの余裕しか残されていなかった。その結果フィルモアはフロアにうち倒され、唖然として、満足感に満たされながら彼等を見送る事になったのだ。

一片の紙の上では、このセットは以下のように記録されている。

II: Breathe In, Crystal Instrument > Luma Daylight, Tap In, For My Peeps, STS9, Moonsocket
E: Havana Ascent, Kamuy

Photo by Rie Kasahara

フロア上から観たこのセットは、汗が飛び散るダンスパーティーだった。僕のマインドは身体から離れて飛翔し、僕の動きはそのビートに操られていた。この素晴らしい週末の正にパーフェクトなエンディングだった。「Breath In」も新曲の一つ。がっしりとしたコンポジションでハンターが今まで見せた事のないギターリードが聴ける。「Crystal Intrument > Luma Daylight」は今まで聴いた事がないようなクールさを放っていた。Zachはこれらの曲について彼がいかにその演奏をエンジョイしているかを話してくれたのだが、その理由は観ていてすぐ理解できる。その中には彼のシンセパッドが基本的には複数のトライアングルとして機能していた部分もあった。空気のように身軽なサウンドが心を包んでくれて、僕達の目の前でパーカッシブな夢が形作られていくようだった。この若いミュージシャン達の成長は僕を驚愕させ続けている。そして、昨今、とかくエゴ優先が目立つシーンの中にあって、彼等が一丸のユニットとして機能できる点は他に類を見ない。

Photo by liz o'keeffe

「Tap In」は想像も出来なかった世界に僕達を引きずり込んでくれたし、それに続く胸を打つようでもあり非常に的を得た選曲でもある「For My Peeps」はダンスフロアで踊り狂っていた僕達みんなが求めていたものだった。「STS9」はダークでこの世のものとは思えなかった。正直言って、この時点で僕は時間を旅し、フィルモアの彼方上空を浮遊しながら後ろ向けに踊っていたのだが、その後には人類の知るところ最大かつ究極で最も強烈な「Moonsockets」が待っていた。「Moonsockets」と「Kamuy」(アンコール)はトライブの代表作となったが、それもそのはず、アンビリーバブルなパフォーマンスだった。「Moonsockets」のイントロはかなり長く霊妙で、僕はおなじみの爆発がグレイエリアから弾け出すまではこのまま彼等がどこか別世界へ飛んでいってしまうのかと思ったほどだった。フィルモアは絶頂の時を迎えていた!「Moonsockets」は永遠に続くかとも思われ、バンドはありとあらゆるポイントでエネルギーを上昇させていった。ビルドアップがインストルメンタルのコーラスに突入するまで高く高く上昇を続ける。Sector 9は彼等のレパートリーに新たなサウンドをコンスタントに付け加えていくという点でも驚きを禁じ得ないバンドで、業界でも「スペースノイズ」にかけてはベストだという事実を見せつけてくれる。Zachがドラムキットから立ち上がり[バスドラを鳴らしながら]腕を掲げてまるでMCのようにオーディエンスを挑発するという場面も観られた。

Photo by Rie Kasahara

このセットが終わった時、クラウドの全員が驚愕の底にいた。僕の友人の一人が振り返って言った、「この後一体何があるって言うんだ?」その答はダブルアンコール、しかも「Kamuy」によるフルオンのダンスパーティー。「Havana Ascent」は美しく、「Kamuy」と再度コントラストの一片を示唆するもので、「Kamuy」はもちろん全身を投げ出したくなるほどの素晴らしさだった。それは止むことなく続き、彼等がもう止めるだろうと思った瞬間、再び継続する。髪を振り乱し、握り拳がパンプを繰り返す。フィルモアの内部は全てがダンスと化していた。どの人を見ても魂を込めて踊っている。カタルシスだ。その夜、そこにいた人々の全てがある贈り物を授かったような気がしていたに違いない。音楽が食物だった。そして僕達はそれに飢えていた。

ショーの後で、僕の良き友、恩師、そしてワンダフルな人物、Striker TKはさらにもう一つの知識を分け与えてくれた。彼はこう言った。「もし彼等が一音も演奏しなかったとしても、僕はそれでも観に行っただろうな。あのバイブはとにかくベストだ。彼等はそこにいる人々の全てから素晴らしいエネルギーを引き出す術を知っているんだから。」僕の友達よ、この事は彼等が演奏した曲と同じくらい大切なものなのだ。あるいは彼等が爆発させたアンコールと同じくらいに。これがSector 9だ。そう、この音楽があの場所へ僕達を向かわせたには違いないが、目に見えないもの、言葉では言い表せないもの、それがトライブをして他のバンドとは全く別のエンティティーにしている。この事が僕達みんながloveを感じてバンドに還元し、バンドはそれに応えて僕達を踊り狂わせ、スペースウォークに連れ出し、身体を震撼させるようなグッドタイムスに誘ってくれるという共生の関係を作り上げるものなのだ。

僕にとってSector 9(そして全ての音楽)は生き方のモデルとなるものだ。心を開け。自由になれ。愛し、信じ、夢を追って走れ。この世を信じ、自分自身を信じ、全ての素晴らしいものの輝きと共に自分が熱くなるまで踊れ。

The Kayceman
JamBase | HeadQuarters
Go See live Music!

[Published on 10/25/2002]

和訳 by wolf

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