平和集会 @ サンフランシスコ
2001年9月29日
集会前夜の金曜日、ローカルニュースはこの集会に約1万人の参加者を予想していた。正直なところ僕はそれ程の人数を期待していなかったのだが、伝統的に平和主義がどのような状況でも広く主張される地域ではむしろ当然の事なのかも知れない。この日はインド、ベルギーなど世界の主要都市、そしてサンフランシスコの他にもワシントンDC、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、マディソン、ポートランドなどアメリカ国内の都市でも平和集会が繰り広げられた。
サンフランシスコは朝から雲ひとつ無い快晴、それも太陽の照りつける夏のような天気でポジティブな平和のための活動には打って付けの日和となった。朝11時過ぎ、ミッション街近くにあるデローレスパークにはステージが設置され、多くの人々がそれぞれカラフルなプラカードを持ち時にはコミカルなコスチュームを凝らして集まり始めた。アメリカン・インディアンの聖なるドラムと踊りが皆を歓迎する。この集会はAct Now to Stop War and End Racism(A.N.S.W.E.R.、戦争停止と人種差別の終結のために今行動しよう)という団体によってオーガナイズされたものだ。
集会は多彩なスピーカー達が、次々にステージに上がり短時間で端的な、しかしそれぞれの背景と特色を生かしたスピーチで拍手と歓声を呼んだ。その中には南米出身で内戦を経験した人、アメリカで生まれたパキスタン人の女性、バークレー市内の高校生の女の子、アメリカ・インディアンの男性、ベトナム戦争から生還した兵士、パレスチナ紛争におけるイスラエル政府の言動を批判するユダヤ人女性、黒人のキリスト教牧師など。参加者を見渡すと、老若男女、宗教、ありとあらゆる人種の経済社会的背景を越えたこれも多彩な人々だった。
主張の内容も様々だ。9月11日のテロ攻撃以来、ニュースをの中心となってきたブッシュ政権の反応を「報復を前提とした無謀な戦略中心の言動」と批判する人々は多かった。さらに大手企業メディアによる報道の低質で報復を煽る内容、アラブ系人種に留まらず、インド人やアメリカで生まれた中近東系の人々への暴力と差別、ブッシュ政権のテロリストの摘発を理由とした国民の自由とプライバシーの侵害政策、影響や損害を省みないアメリカ企業の海外での経営手段など広い範囲に渡るアメリカ自身への批判が圧倒的に共通の課題となった。これに対抗するため、人種差別を捨てて平和な団結を試みる事とその団結を元に世界のあらゆる人々と争いのない社会を実現する事などが細々とした内容で提唱された。テロリストに対しては、アフガニスタンの罪無き人々を傷つけることなく、会話を持つ事を前提とした外交で犯罪者達を国連のレベルで裁くべきだが、軍事行使は絶対反対という主張だ。ブッシュとビンラディンの写真を並べて「同じ憎しみ、違う顔」というプラカードからは、テロリストも軍事行動しかアタマにないようなブッシュも同じではないのか、という疑惑がありありと伺える。
サンフランシスコ市内とその近辺に住む日本人も日本語のプラカードを掲げて参加していた。Japan
Pacific Resource Network(JPRN、日本太平洋資料ネットワーク、http//www.jprn.org/)というNPOの人々が中心だった。
オークランドに住むデッドヘッドの”ジェームス”は「僕達のこの運動は特別なものじゃない。過激なものでも何でもない。単に平和を求める人々が平和に集まって希望の祈りを捧げているんだ。みんながそれぞれ相反する考えを持って悩んでいる時なんだ。テロリストの行為は認めないし、犯罪者は裁かれるべきだ。だけど、今までの歴史を見れば報復が平和を確立した試しがないのだから、僕達は報復との道とは違う次のレベルへ進化するためにはここに集まった人々のように、祈る気持ちと希望を持って訴え続けなければならないと思う」と、笑顔で語っていた。
コミュニティーベースの平和集会となると、もちろんWavy
Gravyが参加する。彼のコミカルで明るいスピーチを待ったのだが、彼はステージに上がらず、人々と話し合い、笑い声の中心に立っていた。
ワシントンDCでの平和デモは多くの団体が終結して行われたが、残念な事にある過激派の団体が警察と衝突、平和運動にあってはならない暴力行為があったためサンフランシスコの参加者の間ではがっかりする人が少なくなかった。このニュースを知った人々の間では、企業メディアではその事例のみが取りざたされ、アメリカ国民に報道されるのではないかと危惧する者もいた。現在の企業メディアの報道内容から見て、可能性大であると思わなければならない。
アメリカ人にとって「自由」というものが多くの解釈の可能性を秘めた大きな課題である事に今さながら考えさせられる一日でもあった。今日の時点で60%を超えるアメリカ国民が軍事報復に賛成、20数%が反対という状況だ。だが、この運動はジェームスが言うように長い時間をかけて続くものになるだろう。今日はその第一日目と言ってもいいようだ。
文・写真by wolf
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