John Hoey(ジョン・ホゥイー)
2001年9月10日

 ジョン・ホゥイーは先日までサンフランシスコに住んでいたミュージック・フリーク。彼はサンフランシスコを離れる決意を固め、2001年9月15日、テロ勃発直後の騒然とした状況の中、約3ヶ月の滞在予定でシアトルに発った。2002年には南カリフォルニアのオーハイという街に移る事を思案中らしい。

 出発を数日後に控えた9月10日、僕達はサンフランシスコ市内のフィルモア街でワインとコーラを飲みながらインタビューを行った。住み慣れた街を離れる直前も彼は、飄々とシアトルで何が起こるかが楽しみで仕方ないといった明るい表情で話してくれた。

Wolf:まず、年齢と結婚歴を。

John Hoey (JH):35才、独身だ。

Wolf:出身は?

JH:マサチューセッツ州、ボストン。

Wolf:いつサンフランシスコに移ってきたの?

JH:1997年。ちょうど4年サンフランシスコに住んだ事になるね。

Wolf:職業は?

JH:金融企業でアシスタントをやっていた。もう知っていると思うけれど、つい先日退職した。

Wolf:君にとって、サンフランシスコで一番エンジョイした事は?

JH:ミュージックシーン。疑う余地無しだな、これに関しては。あとは、この辺で手に入るバッズの質は最高だ。(笑)

Wolf:君は東海岸の出身だけど、君の目から見て東海岸とここサンフランシスコとの違いってなんだと思う?

JH:東の人間っていうのは一般的に了見が狭い。実際には政治的には皆が想像する以上に革新的だ。しかし個人のレベルでは非常に保守的だ。この点一見不思議なんだが、僕の住んだボストンやニューヨークは大きな都市だという事もあってか、政治的にはリベラルだ。東海岸にはカトリック教会という個人レベルの考え方に大きな影響力を持つ存在があるという事も忘れてはならないと思う。みんなカトリック教会に影響された環境で育つんだ。一方、西海岸では人々の心は前向きに開かれている。人々にとって目新しいものがたやすく受け入れられる環境だ。だから政治的にも大変リベラルだ。そしてここにはあらゆる人種が住んでいて、人々のリベラルな感覚に保護されながら人種の広がりというものがポジティブで面白い環境を作り上げている。僕は断然西の方が好きだな。

Wolf:宗教的な信仰の対象というものはある?

JH:誰かははっきりとは分からないが、何か偉大な存在というものは感じているし尊敬もしている。僕は東海岸で生まれた人々の例外に漏れずカトリックとして育った。その反動のためか組織的な宗教というのが嫌いでね。大きな団体が、宗教を通して人々の感情や政治的な見解にまで影響を持つのは正しい事だとは思わないし、好きじゃない。僕が持つ信仰心というのは仏教や禅など、いろんな要素をごっちゃにした自分なりのスピリチュアリティーだ。生きとし生けるものへの敬愛も持っているつもりだ。

Wolf:自分のライフスタイルをどんな風に表現したい?

JH:とにかく楽しむ事。常に楽しい事を追い求めている。生きていく上でそれだけが生活ではないし、いつも楽しい事をやって生きていく事は不可能か大変難しいという事はもちろん承知している。だけど、楽しみたいし、いつも楽しい考えを持って時間を過ごしたい。これはライフスタイルと言うよりはモットーなのかも知れない。僕が楽しむのはいろんな音楽に出会って聴く事だ。そして音楽を通じて多くの人々に出会う事。他には、広い意味で「言葉」に興味があって書く事が好き。実際に口に出して話す「言葉」にも興味がある。もちろん詩を書いたり朗読したりするのも楽しめる。

Wolf:どんな過程で「ジャムミュージック」と呼ばれる音楽に入ってきたのかな?

JH:最初はグレイトフル・デッドは嫌いだった。よく理解できなかったんだ。1986年頃まではね。でもボブ・ディランは好きだった。で、’87年にデッドとディランが一緒にツアーした時、ディランを観たくて行ったコンサートが僕の最初のデッドショーだった。’87年の7月4日、マサチューセッツ州のフォックスボロでのショーだ。デッドのセットで「これかぁ」と初めて感じたのが「ドラムス−>スペース」の時だった。その後、その時のガールフレンドだった女の子の部屋で、彼女が何か音楽を選んでくれと言うから訳も分からずにデッドの「ヨーロッパ’72」をかけた。この時たまたま聴いたのが「Cumberland Blues」や「Me & My Uncle」だった。これらの曲は今でも大好きな曲だ。それ以来もう夢中だった。初めて手に入れたデッドのテープは4/29/71でこれはフィルモア・イーストの最後のショーだった。ピッグ・ペンが「Too Hot To Handle」を歌っている。最高だな。

Wolf:今とても気に入っているバンドは?

JH:ストリング・チーズ・インシデント、ガラジ・マハル、ヨンダー・マウンテン・ストリング・バンド、それにペイブメント。チーズはスピリチュアルで、文句なしに僕をハッピーにしてくれる。彼等の音楽はとてもいい感じで僕を宙に浮かせ、そして特別なスペース、場所に連れて行ってくれる。ガラジ・マハルは僕にとって今一番ホットなバンド。彼等はとにかくユニーク。ミュージシャンとしては全員がバーチュオーゾだ。驚くべき音楽家達だ。彼等は恐れも持たずに極限を追求しているように思う。ヨンダーを初めて聴いた時と言ったら・・・あんなに楽しく、しかも激しく踊った事はその時までなかったね。スタイルは違うけど、彼等もまた驚くべきミュージシャンシップを見せてくれる。感性が豊か。1920年代の曲を演奏したり、ユニークだしね。限界をとことんまでプッシュするバンドだと思う。ペイブメントはジャムではなくて普通のロックバンドだ。ベルベット・アンダーグラウンドやREMの初期のサウンドに似ていると言えばいいかな。感情のこもったバラッドからパンク風のハードで速いロックまで演奏するが、どれもいい。スティーブン・マルクマスという男が作詩とギターをやっている。ロックするに加えて、情緒豊かな非常にいい詩を書くよ。

Wolf:今まで観た中でもっとも印象深いショーについて話してくれ。

JH:1992年、ボストンのアバロンというクラブで観たビースティー・ボーイズ。その頃彼等はラップから離れ、実際に楽器を演奏するバンドになっていた。全部パンクだったな。幅広い年齢の観客がぎっしり。もう一つは’94年だったか’95年か覚えていないんだが、これもマサチューセッツ州のケンブリッジにあるハウス・オブ・ブルースでのホット・ツナのショー。クリスマスだった。このショーも凄かったぜ。あの時は、バーにもたれながらバッズを吸ったんだ。カリフォルニアでは全く抵抗ない事だが、ボストンではそうある事じゃない。同じくケンブリッジにあるミドル・イーストというクラブでのペイブメントのショー。「Brighten The Corners」というアルバムが出た次の日のショーで、あれを語る言葉は未だにない。あと、サンフランシスコであったショーでトニー・ファータド、ダロル・アンガー、スコット・アメンドーラ、ポール・マッキャンドレス、トッド・シッカハウスがエルボ・ルームでジャムったもの。驚いたのは、演奏された曲の全てに、全部だぜ、音楽のジャンルという壁をうち破る要素が必ずあったんだ。な、驚異的だろ?あとは何と言っても’91、’92、’94にあったボストン・ガーデンでのデッドショーだ。この3年に渡り、彼等は18回あそこでショーをやった。そのうち13回は僕のアパートから歩いていったんだ!

Wolf:今までで一番遠かったショーなんてある?

JH:そうだな、’94にボストンからオークランドまでチャイニーズ・ニューイヤーズのために飛んだ事がある。それに今年、サンフランシスコからボストンへ飛んで11時間バスに乗ってマートルビーチであったチーズのショーへ行ったよ。あれは長い旅だった。(笑)

Wolf:今年の夏観たショーで一番よかったと思うのは?

JH:マウント・シャスタであったチーズのショー、特に二日目、8月7日は最高だったな。あれに尽きるね。

Wolf:まだ観ていないバンドで絶対にチェックアウトしたいバンドは?

JH:Umphrey's McGee(アンフリーズ・マッギー)、Single Malt Band(シングル・モルト・バンド)、ロバート・ランドルフ、Railroad Earth(レイルロード・アース)、それにラジオヘッドと似たようなサウンドだと聞いているGrand Daddy。

Wolf:一般に「ジャム」呼ばれる音楽のシーンは一体何が魅力なんだと思う?

JH:まず言えるのは、これはジェリー[ガルシア]の遺産だという事だ。デッドの後、デッドのカバーバンドばかりだったのが、新しい世界を切り開くまで音楽そのものとシーンが発展した。これは今も、そしてこれからも注目すべき事だと思うんだ。そしてこの街にはそれをサポートする強力なコミュニティーがある。これらの人々は音楽ファンで、同時に僕の友達でもあるわけだ。素晴らしい事だね。どんなショーを観に行っても30人から40人の友人知人が必ずいるんだ。そうだろ?さらに、どんなバンドでも彼等のベストを引き出すいいライブ会場がサンフランシスコにはある。フィルモア、ウォーフィールド、グレイト・アメリカン・ミュージックホール、コネチカット・ヤンキー、その他にもいろいろある。ミュージシャンも多く住んでいる所だから、ハプニングも多い。忘れもしない1997年9月26日。僕はこの日に汽車でボストンからの長い引っ越しの旅をしてサンフランシスコに着いた。その次の日、ジ・アザワンズのショーだ。いきなりボブ・ウイアやモーにご挨拶というわけさ。これが正に僕達がここに住んでいる理由だよな。

Wolf:ジャムのファン達の間で何か特別なライフスタイルがあると思うかい?

JH:う〜ん、とくにある決まったライフスタイルがあるとは思わないな。むしろ、人それぞれで変化に富んでいるところや、そのカラフルなところが受け入れられている事は確かだ。共通点と言えばみんな何らかの仕事をしていて、パソコンを持っている。これは連絡を取り合うためと情報を得るためにはもはや必需品だしな。みんな金持ちじゃないしそれ程貯金があるわけじゃないだろうが、多少使えるお金は持っている。そのくらいだろう。本当にいろんな背景を持った人々だ。

Wolf:ジャムのファン達には何らかの政治的なスタンスがあると思う?

JH:一般にジャムのファン達はリベラル・革新的で、民主党寄りの人が多いね。アシッドとポットを経験した人というのは大抵そうなると思うんだ。「神がアシッドをお作りになって世界を守った」ってところだ。ハイを経験する事によって、物事に対して今までとは違った、広がった観点を持つ事になる。ハイになっている時だけではなくて、その後もそうなんだ。アシッドを経験してから、僕は怒りの感情や短気なところがなくなったよ。そして、いろんな面で可能性を見出すようになった。

Wolf:ジャムファンにはスピリチュアルな所があると感じる事はある?

JH:そもそも音楽自体スピリチュアルなんだ。これは平和の観念を広げてゆく道でもある。いい音楽は僕をある特別な所へ持っていってくれる。これ自体素晴らしい事だし、驚くべき事だ。ただ音楽を聴く。それだけでいい。時には音楽を聴いている最中に、例えばチーズが「リトル・ハンズ」を演奏している時に、月が山陰から昇っていくのを観る事だってある。マウント・シャスタでの経験は素晴らしいものだった。

Wolf:生活するために仕事をして金を稼ぐ、という事に関してはどう考えている?

JH:仕事という考え方や仕事自体からは決して満足感、充足感、達成感などは得られないね、僕は。ただ、生活そのものに関してはもう少し考える必要があるし、いつかは自分の答えを出すべきだと思っている。ツアーをしていると結構金は使うからな。今思い出したけど、デッドショーのチケットを買うために米だけ食って、ビールも安物を飲んで我慢した事が何回もあるよ。

Wolf:政治的な活動には参加したり、真剣に考えたりはする?投票は必ずする?

JH:投票は必ずするよ。民主主義を持続しようと思っているんなら当然の事だ。だけど政治的にはそれ程深くは考えないね、今は。かつては僕は政治的な人間だと思っていた。ボストンから離れたという事が影響しているのかも知れない。しかし自分が住んでいる町の問題に関しては大いに興味がある。クリントン大統領のスキャンダルがあったろ?あれ以来、この二党制のシステムからは遠ざかっている。僕には意見がないというわけじゃないよ。僕の一票が二党制のシステムの範疇には収まらないという気がするんだ。このシステムのお陰で政治家の連中はマスコミにしっぽを振らなければならないようになってしまっている。クソったれ、って感じだね。

Wolf:何かクリエイティブな事はやっている?さっき詩を書くっていってたけど。

JH:19か20の頃からずっと詩を書いている。ビースティー・ボーイズに感化されたんだ。友達がやっているバンドなんかでは詩の朗読で参加する事もあるよ。パソコンでアートを創ることもある。最近ジャンベイの練習を始めたよ。

Wolf:マリファナやヘンプについての君の考えを聞かせてくれない?

JH:I love it!マリファナは大好きだ。タバコ企業のあり方を観ていてマリファナに対する考え方が全く肯定的になったんだ。それにマリファナはアルコールに比べても有害性が大変低い。アルコールは自分以外の人間を危険な目に遭わせたりする可能性が高いドラッグだし、人を暴力的に変えてしまうからね。タバコもアルコールも依存性が極度に高い。マリファナにはその心配がないからね。

Wolf:どんなドラッグをやる?

JH:アシッド、ポット、ビール、ワイン。マッシュルームは駄目だ。’91にバッドトリップしちゃってね。あの時は一晩台無しにしてしまった。でも’98のマウンテン・エアーでアシッドをやった時は最高だったぜ。ヨンダーのセットにグリスマンがいきなり出てきたんだ。ドラッグではこれ以外には全く興味がない。ハードドラッグはアルコールよりも達が悪い。

Wolf:これからのプラン、計画している事なんてある?

JH:モットーとしてはツアーを続ける。それも「責任あるツアー」だ。ちょっと説明すると、この「責任ある」というのは一人で独立して充分ツアーが楽しめる所まで行きたい、という事なんだ。現在僕は車も持っていないし、チケットを買う時も友達から買ったり、当日までチケットを買わなかったりしている。ショーからショーへ自分の車を運転し、チケットも前もってちゃんと買った上で、つまりプランを立ててそれを実行したい。その目標のために働く。そんな事だ。

Wolf:推薦する本は?

JH:ケン・キージィの「Sometimes A Great Notion」、エド・アビーという人の「Fool's Progress」、ジャック・ケルアックの「Satori In Paris」、サマーセット・モームのものだったら何でもいい。トルストイの「戦争と平和」、ウイリアム・ケネディーのAlbany Trilogy。あと、編集されているもので「Outlaw Book Of American Poetry」ってのがある。これは一般には出版されていない詩を編集したものだ。

Wolf:最後に何でもいいからコメントがあれば話して欲しいんだけど。

JH:そうだな。最近自分で思っている事。「インスピレーションは他人から貰え。だが行動は自分自身で行え。」そして、実際に実現できる夢を持つ事。人生ってのはとても奇妙なもんだからね。Here and Now。たった今、ここでベストな事を選んで実行する。そんなところかな。

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