Why Japan?
2001年10月、BALANCE誌掲載

ジャムのミュージシャン達に日本へは行かないのかと尋ねると、「いつか絶対に」行きたいと例外なく答える。単なるお世辞ではなさそうだ。実際、アメリカのミュージシャンやファンの間では、日本人が音楽に関して大変熱心で知識も豊富、いたって真面目に聴いてくれる、と評判が高い。その点、アメリカのファンが未熟である事も認めている。でもそれだけが理由ではないだろう。

 ジャムバンドは、一生音楽が出来ればそれでいいというフリーク達だ。大きなスタジアムを回る程の成功を収めたバンドでも、小さな熱気渦巻く会場で音楽だけを考えて演奏できたら、と感じているようだ。デッドがそうだった。もちろんフィッシュも。彼等の成功は、完売した会場の周囲にチケットを買えなかったファンが押し寄せ、不幸にも多くの問題の原因となる状況を生んだ。各バンドは運営の面で悩まされる事になってしまった。スタジアムなどの大きな会場では物珍しさやパーティー騒ぎだけが目当ての観客も多くなり、ファンとの連帯が希薄になる事も彼等には気になる要素となる。ストリング・チーズ・インシデントに至ってはショーの最中に「出来る限り小さな会場で続けて行きたい」と言うこともまれではない。これはミュージシャンが会場内で自然に醸出されるバイブレーションをそのまま取り込めるからだし、観客との連帯感がジャムの経過やショーの結果を左右するという事を知っているからだ。

 小さなハコでも酔っ払いが騒がしい傍ではパワーも出しきれない。チケットを買って入場する割には何も聴かず、カクテルを片手に世間話をする連中がアメリカではかなり多い。サンフランシスコさえその例外ではない。ハイシエラミュージックフェスティバルは毎年7月、独立記念日の週末に4日間行われるジャムバンドの祭典。コロラドのファンクバンド、ザ・モーテットのジャンス・インゲバーが今年のハイシエラで言った言葉が印象的だ。「君たちファンは真剣に俺達の音楽に耳を傾け、踊ってくれる。こんなシリアスなリスナーの前でプレイできるのは本望だ!」

 11月に来日予定のスティーブ・キモックは鋭くかつメロディックで、時には深く聞き込ませるサイケデリックなプレイで知られる。彼があのギターで観客を引力圏外へと連れ去ってしまうのは、彼のパワーと瞑想的な演奏の他に、観客が容易にのめり込める環境があるからだろう。単独のショーで演奏する会場は普通5百から6百人程のハコだ。サンフランシスコ近辺では完売は普通。キモックファンだけが会場内を埋めつくす。会場内には自発的にキモックを盛り立てるバイブレーションが満ちている。チケットのないファンも問題を起こすには程遠い真の音楽ファンだ。ジャムバンドはそんな環境を自ら維持しながらツアーを続けている。

 リビング・デイライツ(シアトルが誇るジャズ系グルーブバンド)のベーシスト、アーニー・リビングストンに日本について訊いてみた。「必ず行きたいね。日本の音楽ファンは真剣に聴いてくれるらしい。ヨーロッパもそうだが日本は特別だと皆言うよ。プレーする側にとってそれは本当に魅力的だ。音楽を尊重する人々のために演奏したいし、日本のシーンからも学びたい。それに日本の伝統文化と美意識には大変興味がある。」彼は熱心に答えてくれた。

 彼等にとって、日本は小さな会場でレベルの高いファンと一体になって演奏できる絶好の場所だ。異文化での経験はミュージシャンとして貴重なもの。同時に海外での新たなファンベースを築くチャンスでもある。そんな彼等を応援したい。だから、彼等と会話するチャンスがあれば、いつでも同じ質問を繰り返す。「日本へは行かないのかい?」と。

文 by wolf

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