ファリード・ハーク | 子供から教授へ
僕達はパート1でファリードの経歴を紹介した。彼の幼少時代の旅、初期の頃の影響、最初のコラボレーション。ファリードが北テキサス大とノースウエスタン大から奨学金を得て、学術的なキャリアを持っているのも知った。彼はバングラについて語ってくれたし、ガラジ・マハルとファリード・ハーク・グループとの違いなども説明してくれた。DJについて語り、彼の視点で捉えたクリエイティビティーを知る事が出来た。彼の「お箸でもペイントでも英語でも音の断片でも、それらは全てあるアートフォームへと組み立てられるパズルなんだ」と言う言葉が大変印象的だった。これはファリード・ハークの心中に迫る会話のパート2だ。Enjoy。
Kayceman:あなたのギターについて考えていたんですが、ガラジ・マハルとファリード・ハーク・グループでは別のギターを使うんですか?
Fareed:うん、ギター演奏に関しては異なったアプローチをしている、と言えるね。ガラジ・マハルではでっかいアンプを使って、音量もでかいしサウンドも明るく、ロックするし、吼える、唸る。ファリード・ハーク・グループでは、よりメローでファンキーな音を使う。グラント・グリーンみたいな感じだ。グラント・グリーン、パキスタンへ行く。そんな感じだな。それにアコースティックギターを使う事が多くなった。僕はGodinが造っている「Glissantar」という11弦のフレットレスでナイロン弦を使うギターを持っていて、それも弾くし、ギター・シタールももちろん弾く。これはガラジ・マハルでも弾いているよ。ガラジ・マハルでは通常「Godan LGX」を使う。これはとてもビューティフルでおてんばなエレキだ。ファリード・ハーク・グループでは通常70年代もののオールド・ギブソン・ジャズギターを使っている。アコースティック12弦も弾くよ。多様な色彩を出せるからね。
Kayceman:ブルーノートからのカバーシリーズについて読んでいたんですが、「デジャ・ヴ」を制作した時、どんな経過でそうなったのか、「デジャ・ヴ」をカバーするのに特別な思い入れがあったのか、興味があります。
Fareed:彼等は僕がカバーしたい10枚のアルバムを知らせてくれと言ってきた。あれはそのリストのトップにあったものの一つなんだ。レッド・ツェッペリンの「Presence」、ニック・ドレイクのアルバム、ジョニ・ミッチェルとか、ピンク・フロイドの「The Wall」とかね。でもクロスビー・スティルス・ナッシュ・アンド・ヤングの4部からなるボーカルのハーモニーは非常に繊細で、アコースティックギターでプレイしてくれって言ってるようなものだった。僕はクラシックのスタイルで3つか4つのボーカルの部分を1本のギターで演奏するのは容易に出来るから、特に僕の能力にしっくり来るものだったんだ。他のギタリストだったら困難だったかも知れないね。何故かというと、3つか4つのヴォイスを同時にギターでやるにはクラシックギターの技術を必要とするからだ。だから、あれは実際にやっていて楽しかったよ。そして、あの音楽自体、それを高めるのに多くの可能性を秘めていた。
Kayceman:とすると、あのアルバムはかなり重要な影響を与えたという事ですね。
Fareed:CSNYは全般的にそうだと言える。「Winchester Cathedral」もやりたかったんだが、コンセプトとしてはアルバム全部をカバーするという事だったからどのアルバムに僕がやりたい曲が最も多くあるかを考えなければならなかった。「Winchester Cathedral」をギターで演奏する事については容易に想像できるけどね。とてもきれいなアレンジになるだろう。彼等の音楽にはとてもクールなものが多い。で、[「デジャ・ヴ」は]よく知られたアルバムだし、際立っている。過去の有名なアルバムをカバーするというのがアイディアの一部だったから。経緯としてはそんな感じだ。
Kayceman:先ほどおっしゃっていたグラント・グリーンなどのより明白なチョイスの他には、隠れた影響を受けた人々がいるとすれば誰でしょうか?
Fareed:絶対にジャズギタリストのパット・マルティーノ。もちろんジョン・マクラフリンおよび彼のインド音楽への関心だ。実のところシャクティのタブラ奏者であるザキール・フセインとアルバムを録音したばかりなんだ。
Kayceman:ええ、彼の事はよく知っていますよ。
Fareed:彼は驚異的だ。あんな化け物のようなミュージシャンのあり方には驚嘆するばかりだ。彼等はより優れている分、よりレイドバックしていて、よりビューティフルなんだな。だって僕が生きてきた間ずっと僕のアイドルだった人物がいて、スタジオに入ったとたん「あなたと演奏できて光栄です」だもん。昔からの同級生みたいにすぐに仲良くなったよ。これ自体、僕にとっては驚くべき事だ。え〜っと、だからマクラフリンとパット・マルティーノは確実だ。パコ・デ・ルシアもそうだし、クラシックギタリストのジョン・ウィリアムスもそうだ。この4人はギタリストとして強烈な影響を受けた。音楽的な面で言えば偉大なジャズミュージシャン達、つまりハービー[・ハンコック]、ウエイン[・ショーター]、マイルスとトレーンだ。オレは今でもクラシックはたくさん聴くし演奏もする。スペインの印象派の多くからも大きな影響を受けている。
Kayceman:この会話でちょっと前に話題になったセクター9などの若いバンドで気に入っている、なんてありますか?
Fareed:ある特定の人々を取り上げて話すのはなるべく避けたい。誰も漏れないようにしたいじゃないか。ここ暫く非常に多くのバンドと出会ってきたから。去年を境に僕にとっては全く新しい世界にいるようだよ。ブラッド・バーとThe Slipがやっている事は凄く好きだよ。とてもオリジナリティーに富んでいてユニークだね。ジャズ・マンドリン・プロジェクトがやっている事も非常に気に入っている。ハイシエラで飛び入りさせてもらったけど、あれはとてもクールだった。誰かとジャムる時は大体が一緒にプレイしていると言うよりは同時に演奏しているっていうケースが多いんだが、あの時はオレもやってる、彼もやってる、そんな感じだった。ジェイミー[・マスフィールド]とオレは、いろんな演奏をして、二人とも今までやった事がない音楽をプレイ出来たんだ。
Kayceman:僕もいたんですよ。ハイシエラではあなたの演奏をいろんなところで観た。ガラジ・マハルはそれ以前には聴いてはいたけど、ガラジが演奏するのを観たのはその時まではなかったんです。基本的に、あれであなたのファンクラブに入ったようなものです。
Fareed:お前、いい事言ってくれるね〜(笑)。面白いのは、あの時ちょうどフランスから帰ったばっかりで、あの後とんぼ返りだったんだぜ。4、5日寝てなかったよ、実際。
Kayceman:そう、レイトナイトのギグではかなり疲れていたような。
Fareed:プレイしまくってたからな。オレのお気に入りのカール・デンソンと彼のバンド、それにロバート・ウォルターとそのグループなしには語れない話だ。オレ達は一緒にやっていてとにかく楽しかったね。
Kayceman:このウイークエンドもカールの前座でしたよね。
Fareed:うん、彼ともジャムる事になると思うよ。オレ達は拡張したファミリーになったようなもんだよ。音楽の世界ってここがいいところなんだ。ミュージシャン達が言っている事の一つに、出来るミュージシャン達はお互いの音楽を聴く機会に恵まれないというのがある。どうしてかと言うと、今の時代は誰かを聴きに行こうと思うと飛行機一本だからね。だから、いろんなフェスティバルがあって、一緒にハングアウトしてジャムれるのはミュージックシーンにとって健全だと思うよ。
[筆者ノート:ファリード・ハーク・グループはサンクスギビング・ウイークエンドにシカゴのヴィック・シアターで行われたKarl Denson's Tiny Universeのショーで前座を務めた。ファリードが彼等とジャムったのは言うまでもない。]
Kayceman:ファンにとっても凄い事ですよ。
Fareed:40年代、50年代に、ジャズの世界では頻繁にやっていたんだよ。だけど音楽の商品化が激化した途端、死に絶えたわけ。いい音楽が生き長らえるのにどれだけ大切かを、ジャムバンドシーン自体がまだ充分に理解していないと思う。
Kayceman:ミュージシャン達がそんな風に感じているというのは力強いですね。
Fareed:その通り。
Kayceman:次の夏のハイシエラで、ファリード・ハーク・グループかガラジ・マハルを見れると期待してもいいんでしょうか?
Fareed:ガラジ・マハルが参加するのはすでに決まっている。前にも言ったけどファリード・ハーク・グループでオレ達がでくわす難点の一つに、この二つのバンドが違うものであって、お互いに争っているものでもなく、ただ違うバンドなんだという事をみんなに分かってもらうってことがあるんだ。オレがヨーロッパから帰ってきたら、お前がちょっと聴いたあのアルバムを完成する。
Kayceman:あれ聴き始めたら止まらないんですよ。
Fareed:いかしたグルーブだろ?
Kayceman:ハマってますよ。凄くいい。
Fareed:いいキャストも揃っているし、DJの部分をかぶせて、もうちょっとサウンドエフェクトを追加する。
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カリヤン・パタック |
Kayceman:ファリード・ハーク・グループのメンバーについて話してもらえますか?
Fareed:ドラマーはジョー・ビアンコ、ベースにジョン・ポール、ローマ法王とは関係ないよ、タブラにカリヤン・パタック。
Kayceman:で、エリックがキーボードを弾いてますね。
Fareed:そう、エリックがキーボード。そして、ジェイ・カッポがDJだ。
Kayceman:ガラジとファリード・ハーク・グループの曲はほとんどあなたの作曲によるものですか?
Fareed:ファリード・ハーク・グループの曲は全部オレが書いている。ガラジについては3分の1か4分の1だな。オレ達はやっと充分なギグと作曲などのために一緒に過ごせる時間が出来てきたんだ。一緒に何曲か作った。クールでもあるし、違った経験だね。ガラジはワールド、アフリカンファンクのバイブレーションにより近づいてきている。
Kayceman:分かります。あなたの作品の多くは分岐と即興を設定するように出来ているようなんですが。
Fareed:その通り。
Kayceman:あなたの作品で構成が決まっているもの、枠にはまったものはありますか。それとも全部オープンにしてしまう?
Fareed:アルバム「Opaque」のために5ページから10ページの楽譜を単に最初から最後まで演奏するような曲をかなり多く作曲した。少しくらいはインプロを入れるものもあるけど、基本的には確固とした構造があって、そのほとんどがかなり複雑な仕組みになっている。ファリード・ハーク・グループではそのうちいくつかの曲を実際にやるんだ。ある部分で少しジャムって、それから形の決まったものをちょっとやって、再びインプロビゼーションに戻る、とかね。形式的で、構成された音楽、クラシック音楽が好きだからだが、一晩中それをやるのもなぁ。オレにとっては、即時的な音楽があり、そこにあるエネルギーがあり、客が汗だくになっていて、そのちょっとした隙間にインタールードとして入れるのにちょうどいい。そのタイミングでちょっとクラシック風の、形のあるものを入れる。そうするとオーディエンスはみんな一息ついて、その後また踊り出す。
Kayceman:あなたの授業について少し聞きたいんです。ツアーの間にどうやって授業をフィットさせているんですか?
Fareed:あまり上手くいっているとは言えないな。散々な長話を端的に言うとだな、基本的にこの1年半というもの、オレの生活は地獄だった。トラベルと授業以外何もする時間がない。これはかなりキツイぜ。オレはフルタイムで教授をやっている。これは実際にどういう事かと言うと、ここで二日間教えるというのは2、3時間教えるなんて事じゃなくて朝の10時から夜中までなんだ。ここでお前と話が出来るのは、オレの生徒の一人が休んだからだ。一週間に二日、12時間から14時間ここで教えて、水曜日の朝どこかへ飛ぶ。水、木、金、土はどこかで演奏。日曜日に帰宅、半日をワイフと過ごし、月曜の朝は教壇に立っている。オレはこれを、う〜ん、ちょっと長くやりすぎてるね。ちょっとキツイね。近い将来、改善したいと思っている。
Kayceman:どんな授業をしているんですか?
Fareed:クラシックギター、ジャズギター、個人レッスンだ。アシスタントが数人いるよ。その一人と小さなグループジャズのプログラムもやっている。ジャズの理論とジャズのインプロビゼーションも教えている。
Kayceman:理論を教えるのは大きなクラスですか?
Fareed:僕が教えるのは大方出来る学生なんだ。だから、クラスは小さいよ。7人から15人くらいだな。例外は、小さなグループを一つ教えていて、それは講義なんかじゃなくて、生徒は全員楽器を手にしている。オレ達はみんなで踊りながら一緒に音楽を演奏するんだ。そこには40人ほどいる。凄い騒ぎだぜ。2、3時間ジャムアウトする時間があるからな。
Kayceman:何年間教えてきたんですか?
Fareed:1988年からだから、13年になる。
Kayceman:興味ある事を読んだのですが、バロック音楽の編曲もするんですってね。
Fareed:クラシック音楽というのは通常4つか5つの歴史的時代に区別されている。1400年から1500年あたりのルネッサンス音楽。16、17世紀のバロック。クラシック時代はモーツァルトからベートーベンの初期、そしてロマン期。その後はもちろん現代音楽だ。バロック音楽と我々がクラシック音楽として捉えている古典音楽は、人々が認識しているよりはずっと即興性の高いものだったんだ。実際に、オレは来週2週間の予定でドイツへ行って、いろんなクラシック音楽を演奏するんだ。一緒に演奏するのは即興も出来るクラシックの音楽家達で、ほとんどの人が聞き慣れているよりも即時的で、エキサイティングでよりグルービーにクラシックを演奏できるんだ。オレが思うに、正にこれがクラシック音楽として聴くべきものだ。
Kayceman:面白そうですね。
Fareed:オレにとっては全ての音楽は人々の音楽だ。そして、全ての音楽はグルーブしなければならない。クラシック音楽やジャズがオーディエンスを突き放してしまうのは、人々が多くの音楽に宿る真のエッセンスを忘れ去ってしまったからだと思う。オレが演奏する音楽を通して失われたグルーブを再生させようとするのが、オレの使命だと思っている。
Kayceman:全ての領域を網羅するのは確かですよ。
Fareed:思ったよりは易しいよ。つまり、あるハコで汗まみれで演奏して、ハコの中のみんなが集団的、催眠的なトランス状態の時に、そこにただ座って何も考えずにクラシックの曲を演奏する事なんか出来ない。何事においても、そんな無茶はしない事だ。
Kayceman:ガラジ・マハルに対して、ファリード・ハーク・グループがどんな方向へ行くかのビジョンはありますか?
Fareed:ある意味で、ファリード・ハーク・グループは常により親密で、より民族的なもの、あるレベルでは強烈なものになるだろう。一方ガラジ・マハルはよりヒップ、より外向的、そしてパーティーの雰囲気がある。ファリード・ハーク・グループは瞑想的だ。その気になれば緊迫した瞑想というかタントリックなメディテーションだろうな。
Kayceman:是非試してみたいです。それを体験するのが待ち遠しい。
Fareed:ダンスフロアにシミをつけないようにな。
Kayceman:やってみます。
Fareed:今まで2、3度凄くいいギグになった事があって、そこにはクレイジーで、強烈で、いいエネルギーがあった。女の子達に見に来て欲しいんだよ。これって大切な事なんだ。分かるだろ?オーディエンスを見渡したら、なんか野郎共ばっかりでさ(笑)、「止めようかな」みたいな。オレ達は、年輩の人達、若い人達、可愛い女の子達が踊って楽しんでいるのを見たいんだ。
Kayceman:ファンの間でもそれは同じですよ。入っていったら男ばっかりで「オレは何しに来たんだ?」みたいな。
Fareed:全くだ(笑)。男女両方にアピールしない音楽にはどこかおかしなところがあるんだ。
Kayceman:賛成です。
Fareed:ファリード・ハーク・グループはより女性的、ガラジ・マハルはどちらかというと男性的と言えば、違いを分かり易く説明できるんじゃないかな。
Kayceman:僕はどちらのショーにも女性の友達をたくさん連れて行きますよ。
Fareed:(爆)オレに紹介するのを忘れんなよ。
The Kayceman
JamBase | Head Quarters
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(訳 by wolf)
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